犬疥癬
症例
皮膚科・耳科
犬疥癬とは?
犬疥癬はイヌセンコウヒゼンダニ:Sarcoptes scabiei var. canis感染によって生じる疾患です。
ヒゼンダニの雌ダニは表皮に内に潜伏し、1日に2−3mm表皮外層部に穴を掘って進み、産卵をします。卵は数日で孵化し、幼虫期、若虫期を経て、成虫として表皮に出てきます。
2つの病態が見られ、通常疥癬と角化型疥癬に分類することができます。
症状は?
通常感染は、アレルギー疾患であり、激しい痒みや耳介辺縁、顔、肘、踵、腹部に紅斑、丘疹、脱毛、鱗屑、痂皮などがみられる。
角化型疥癬は、感染症であり、耳介辺縁、肘、踵、腹部に痒みを伴う、厚い鱗屑が特徴的です。
診断は?
臨床像をもとに、皮膚掻爬検査を行い虫体や卵を確認します。
通常疥癬の場合、検出率が低く、治療的診断を用いることがあります。
角化型疥癬は多数寄生のため、虫体の検出は比較的用意です。ただし、皮膚バリア機能異常や免疫機能低下の関与が疑われるため、基礎疾患の探索をする必要があります。
治療
犬疥癬は駆虫薬を用いて治療されます。
治療薬として
・ イベルメクチン
毎週投与もしくは隔週投与で、内服投与か皮下注射を行います。
フィラリア陽性犬やMDR1遺伝子の変異がコリー種には投与の注意が必要となります。
・ セラメクチン
隔週もしくは1ヶ月ごとにに液剤を皮膚に滴下していきます。
・ イソオキサゾリン化合物
アフォキソラネルやサロラネルなどは28日間隔で2回投与、フルララネルは1回投与でされます。
イソオキサゾリン化合物は神経伝達物質受容体に作用するため、てんかん発作の病歴がある犬への投与には注意が必要です。
犬疥癬は強い痒みを伴うため、痒みの管理も一緒に行うことがあります。
抗ヒスタミン製剤やオクラニシチブ(アポキル)などが使用され、ステロイドの使用は控えることが多いです。
また、犬疥癬虫は犬から犬へ感染をします。
そのため、多頭飼いされているご家庭では、全ての犬の駆虫が必要になります。また野生動物、特にたぬきから感染することもあります。
さらに、犬疥癬虫は人にも感染します。宿主特異性があるため、人では産卵することはありませんがありませんが、1週間は生存すると言われています。強い痒みや湿疹がみられる際は皮膚科への受診をお願いいたします。