膿皮症
症例
皮膚科・耳科
膿皮症とは?
膿皮症は、ブドウ球菌などの細菌が皮膚の上で異常増殖、感染を引き起こすことを言います。
人や動物の体内・体外には健康ない状態でも数多くの微生物が存在しています。これを常在菌と言い、皮膚の上には常在菌の1種であるブドウ球菌が存在します。ブドウ球菌には様々な種類がありますが、膿皮症に関連しているのは主にその1種であるStaphylococcus psudintermediusです。
膿皮症は病変の深さによって、表面性・表在性・深在性に分類されます。
表面性膿皮症皮膚表面に細菌の増殖するが、まだ感染を引き起こしていない状態 |
表在性膿皮症表皮内あるいは毛包内に細菌が感染している状態 |
深在性膿皮症真皮あるいは皮下組織にまで細菌が感染している状態 |
膿皮症の症状は?
病変の深さが異なることで、起こる病態を違います。
表面性膿皮症は、皮膚は平坦な状態のままです。赤みが目立つことが多いです。
左から
・表皮小環
遠心性に拡大する病態であり、辺縁に落屑(フケ)が生じた状態
・膿痂疹
表皮内に膿疱が生じた状態
・毛包炎
毛包内で炎症が生じた状態
深在性膿皮症は、せつ腫や蜂窩織炎などの病態をとります。
左から
・せつ腫
複数の毛包を巻き込む重度の毛包炎が生じた状態
・蜂窩織炎
皮下脂肪織まで炎症が波及した状態
膿皮症の起こる原因は?
皮膚には外界から身を守るためのバリア機能があります。そのバリア機能には ①物理的 ②免疫的 ③抗菌的 なものから構成されます。
この機能が低下することで、細菌が皮膚に入り込み感染を引き起こします。
機能が低下する原因として、
先天的要因(アレルギー、脂漏体質、エーロスダンロス症候群など)、代謝異常、スキンケア(ブラッシングなど)、外傷、栄養不足などさまざま要因があります。
そのため、原因を追求していくために、身体検査、家での飼育状態、全身状態把握のための血液検査などが必要になることもあります。
膿皮症の治療法
治療方法は抗菌薬を用いた全身療法か、消毒薬などを用いた外用療法があります。
全身療法表在性膿皮症の場合、抗菌薬により2—3週間で寛解します。寛解後、抗菌薬を1週間追加投与を行います。 深在性膿皮症の場合、抗菌薬の投与を1ヶ月以上投与することが多く、寛解後も2週間の追加投与を行います。 |
外用療法表在性膿皮症の場合に用いられます。ブドウ球菌に対して有効なクロルヘキシジン製剤が良く用いられます。シャンプー剤を使用する場合、週2回程度の頻度が必要となります。部分的に消毒液を毎日塗布していくこともあります。 |
繰り返す、治りづらい膿皮症抗菌薬を2週間以上投与したにも関わらず寛解しない場合は注意が必要です。近年、膿皮症を引き起こす菌のうち4割程度が膿皮症に良く使用されるセファレキシンに耐性を持っている『薬剤耐性菌』なのではと言われています。そのため、抗菌薬を投与したにも関わらず、なかなか治らない、症状が広がっていくなどの場合は、耐性菌の存在を疑い、症状を引き起こしている菌が何なのかを特定していく細菌培養・感受性検査行う必要があります。 また、膿皮症を繰り返す引き起こす場合、根本的な原因を治療をしていく必要があります。皮膚バリア機能を低下させる要因を追求し、治療していくことで、膿皮症を起こしにくくすることが可能となります。 |